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絶滅に瀕するタスマニアデビル、遺伝子の急速進化で危機脱出!?

先日、オーストラリア・タスマニア島の固有種、タスマニアデビルがこの20年で急速に進化しているという記事がAFPBB Newsに出ました。伝染性の癌DFTDによって絶滅の危機に瀕していたタスマニアデビルが、わずか20年の間に急速に進化して、病気に打ち勝とうとしているというのです。これが本当なら、生物ってすごいですね。ところでタスマニアデビルを絶滅の際まで追い込んだDFTDとは、いったいどんな病気なのでしょうか?

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DFTDとは Devil Facial Tumour Disease の略で、デビル顔面腫瘍性疾患と訳される、タスマニアデビルの顔面にできる悪性腫瘍、癌です。このDFTDの質が悪いのは、致死率が100%近くに達する上に、伝染性までもが非常に高いことです。1996年に初めて発見されてからあっという間にタスマニア全島に広がり、わずか十数年の間に、タスマニアデビルの個体数は90%も減少してしまいました。しかもその伝染経路は、タスマニアデビル特有の習性によるものだったんです。

タスマニアデビルは愛らしい外見とは裏腹に、非常に闘争心溢れる動物で、しょっちゅう仲間同士でけんかをして噛み付きあう習性があります。ところがこの時に、傷口からDFTDが伝染してしまうことが分かりました。伝染性の癌。恐ろしすぎます。

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種を保全する唯一の方法は、まだ未感染の個体を隔離して飼育、繁殖させることだということで、デビルズ@クレイドル(devils@cradle)などオーストラリア全土の施設で保護政策がとられました。私たちがデビルズ@クレイドルを取材したのは2012年末。その時の担当者のお話によれば、ワクチンの開発などいろいろな対策は試みているが、まだまだ時間がかかるということでした。

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ところが先日発表された研究内容によれば、20年前と現在のタスマニアデビルの遺伝子を解析したところ、なんと免疫力と癌への抵抗力に関連する遺伝子が急激に進化しているというのです。たった20年、わずか4〜6世代のうちに、種レベルで急速に進化する遺伝子。これは、生物の進化には時間がかかると考えていた私たちの常識をはるかに超えるものといえるでしょう。生物の生きる力って、本当にすごいと思います。


このDNAの進化によってタスマニアデビルが絶滅を免れるかどうかは分かりませんが、少なくとも一筋の光明は見えてきました。ここはなんとか踏ん張ってもらいたいものです。がんばれ、タスマニアデビル

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