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PremiereにAvid、Davinci Resolve、Edius、Final Cut Pro・・・動画編集ソフトは何が良い?

これ、よく聞かれるんですよね。写真と違って動画は編集して初めて作品になるので、いつかはたどり着く問題です。しかしいったいどのツールを使って編集すれば良いのやら。その答えははっきり言って「どれでもいい」です。そしておそらくどれか一つを使いこなせれば、他のツールも慣れればすぐに使いこなせるようになると思います。しかしこれでは元も子もありません。今回は、パソコン付属のソフトでビデオ編集を始めたけど、少しステップアップしたい、という方のための動画編集ソフト、アプリケーション選びを考察してみたいと思います。
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業界標準だからいいソフトとは限らない

テレビ番組制作では最終的にいろいろな人々が作業に関わるうえ、納品方法や過去の映像資産などの問題もあるので、どうしても汎用的なワークフローが必要になります。オフライン編集ソフトに限れば、現時点で業界標準といえばAdobeのPremiereでしょうか。そのほかEdiusや老舗のMedia Composerを使用しているところもあります。かつてはオフライン編集はFinal Cut Proと言える時代もありましたが、Final Cut Pro X にバージョンアップした時に、使い勝手のあまりの変わり様と既存システムとの相性の悪さから、流れは一気に他のソフトに傾きました。

しかし、家庭やYoutuberなど少人数で作品を制作する場合は、他者との互換性や納品方法にこだわる必要もないので、違う角度からソフトを見る必要があると思います。ではどの様な観点で使う編集ソフトを決めれば良いのでしょうか。それは、

1.編集の基本であるカット編集がやりやすいこと
2.初めてでも分かりやすいこと
3.エフェクトやトランジションのプリセットが豊富なこと
4.長年にわたってデータを使用できること
5.価格

この5点だと思います。そしてこの中でどれが最重要項目なのかは、自分がどんな作品を作りたいかによって決まると思います。では一つ一つ見ていきましょう。

自分にあった編集ソフトの選び方

【カット編集がやりやすい】
たくさんある素材の中からカットを選んで並べていく作業をカット編集と呼びます。カット編集は動画編集の基本中の基本です。テロップやエフェクトなどはあくまで最後の仕上げ。まずはカット編集をしっかりできるようにしましょう。カット編集にも編集ソフトによっていろいろやり方がありますが、長編なのか短編なのか、カット数が多いのか少ないのか、時系列なのかランダムなのか、マルチカム編集をするのかなど、作品によってやりやすい方法は異なるので、いろいろな編集方法ができると作業の高効率化に繋がります。またマウスでの操作が主体なのか、キーボードでのショートカット操作が主体なのかといった違いは操作を覚える上でも作業効率の点でも重要なポイントですが、これは普段のパソコンの使い方にも影響される部分です。

【初めてでも分かりやすい】
シンプルで使いやすいということと高機能はどうしてもトレードオフの関係になりがちです。いずれのソフトを使うにしても、ある程度のトレーニングは必要でしょう。高機能なPremiereはよく初心者にはとっつきにくいと言われますが、Aodbeの他のソフトを扱っている方には比較的分かりやすいとも言われています。独学で学ぶ場合は、各種情報やチュートリアルなどの動画、あるいはマニュアル本などが多くあるソフトの方が学びやすいかもしれません。

【エフェクトやトランジションのプリセットの豊富さ】
カット編集を終えるとテロップやエフェクト、トランジションなどを駆使して仕上げに入りますが、ここで簡単に格好良く加工したい場合は、最初から入っているプリセットやテンプレートを使うといいと思います。細かい設定を作り込みたい場合は、AfterEffectやMotionといったソフトを習得しましょう。また、サードパーティ製のプラグインを追加できるタイプのソフトを使えば、使いたい機能を後からどんどん増やすこともできます。費用はかかりますが、こういったプラグインには魅力的なものがとても多く、一味違う仕上がりが期待できます。サードパーティプラグインといえば、例えばフラッシュバック社の製品などがあります。

【長年にわたってデータを使用する】
動画は記録でもあります。古いデータを引っ張り出したいことも少なくありません。例えば子どもの結婚式に流すビデオを作成するのに、その子の幼少時代の動画を引っ張り出したい時などですね。その場合、当時使用していたソフトはパソコンの環境の問題もあって使えないことがほとんどなので、過去のデータも読み込めるように長年更新されてきた編集ソフトを使用することは、とても大きなメリットがあります。また、他のソフトに互換性の高いデータを書き出すことができるソフトを使用すれば、万が一ソフトを乗り換える必要が出てきた場合でも安心です。

【価格】
ソフトの価格は当然ですが、そのソフトを動かすパソコンのスペックも重要です。各ソフトは推奨環境が異なるので、自分の使用するパソコンのスペックに見合うものかどうかチェックする必要があります。例えば多くの編集ソフトがCPUの能力に性能を依存するのに対し、Davinci ResolveはGPUへの依存度が高い等です。体験版や無料版を通じて、撮影した動画をきちんと編集できるかどうか事前に確認することをお勧めします。

代表的な編集ソフト

以下に代表的な編集ソフトを紹介します。他にもたくさん編集ソフトはありますが、先ほどの「動画は記録である」という観点から考えると、あまり特殊なソフトや互換性の低いソフトは正直お勧めしません。

Premiere
陰の時代もありましたが、現時点では現場でも良く見るソフトです。一番のメリットは同じAdobe社の PhotoshopIllustrator、After Effect といった自社ソフトとの連携面。サードパーティプラグインも豊富です。初見では分かりにくいという指摘も多いですし実際その通りだと思いますが、マニュアルやチュートリアル動画も多いので、しっかり基本を学べば扱えると思います。またPremiereを習得すれば、他の多くの編集ソフトも比較的容易に扱えるようになると思います。一番の問題はサブスクリプションしか設定がない価格でしょうか。簡易版の Premiere Elements もありますが、正直全く別物です。ただこちらはテンプレート類は豊富なので、簡単に格好良く作りたいという方には選択技に入ってくると思います。

Edius
日本のCanopus社が2000年代から製品化し、現在はGrass Valley社が後を引き継いでいます。当初は自社のキャプチャーボードとの併用で実力を発揮するソフトでした。一番の魅力は何と言っても動作の軽快さで、特にキーボード操作を使ったカット編集はとても快適。結婚式などの長尺のコンテンツや素材が多いコンテンツの編集などに威力を発揮します。反面タイトルテロップ系やプラグイン系は現時点では他製品ほど揃っておらず、他社製品との互換性でも若干劣る印象があります。金額は買取系ですがバージョンアップ版でもそこそこします。Mac版はありません。

EDIUS Pro 9 通常版

EDIUS Pro 9 通常版

  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: DVD-ROM

Media Composer
Avid社は1980年代に初めて動画編集をパソコンに持ち込んだ老舗中の老舗。ナレーションや音楽を収録ミックスする同社の業界標準ソフトProToolsとの連携性が非常に高く、世界中のプロの間で愛用されています。操作系はまさにAvid流と言えるもので、初見ではPremiere以上に難解かもしれませんが、Music PVやテレビ番組、CMなど、尺があらかじめ決まっているようなコンテンツ制作では理にかなった操作系で使いやすいです。さすがはプロ御用達ソフト、できないことはないといってもいいですが、その代わり自動的に格好良くするような簡易機能には全く期待できません。価格は業務用なので高額ですが、最近は機能を限定した無料版もあり、ハイビジョンなら問題なく編集可能ですので、プロがどのようなツールを使っているのか覗いてみるのも面白いかもしれません。

Avid Media Composer 8 ドングル付き

Avid Media Composer 8 ドングル付き

  • メディア: エレクトロニクス

Final Cut Pro X
Macに付属のiMovieから編集を始めた方にはとてもとっつきやすいソフトで、付属のプリセットのほか、サードパーティプラグインも豊富で使いやすく、容易に格好良く加工してくれる編集ソフトの代表格として愛用している人も多いです。価格も買い切りで、今のところバージョンアップも2011年の発売開始以来無料なのが嬉しいところです。Apple社の製品なのでWindows版がないのは当然ですが、逆に推奨環境を満たしていればパソコンとの互換性を気にする必要がないのもメリットです。自動保存しかない、トラックの概念がないなど、操作系が他のソフトとはかなり異なるところがあるので、他のソフトから参入すると苦戦するかもしれません。
www.apple.com

Davinci Resolve
BlackMagic社が自社のキャプチャー再生ボードの販促用に開発したソフトです。最近はカット編集の環境も整ってきましたが、一番の長所は何と言ってもカラー編集部分にあります。弄くれるパラメーターが多く、トラッキングも容易なので、色にこだわりたいならとてもお勧めです。特に色環境の調整が難しい水中動画には無類の強さを発揮します。他のソフトとの互換性が高いので、カラー編集だけDavinci Resolveを使用するという方法をとることもできます。有料版も比較的リーズナブルですが、無料の機能限定版も機能限定というにはもったいないくらい機能が豊富なので、いろいろ試すためにとりあえずインストールしてみるのもいいでしょう。


ざっと記しましたが、それぞれのソフトにはそれぞれの長所があるうえ、作成するコンテンツや自分との相性もあるので、とにかく使ってみることが一番です。まずは無料版や体験版をインストールして、何か1本動画コンテンツを作成してみることをお勧めします。