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動画撮影に最適な三脚は?

動画を撮影する際、三脚が使いにくいと感じたことはありませんか? アングル固定で撮影しているうちはいいけど、少しでも左右や上下に動かそうとすると難しかったり、最後は面倒臭くなって手持ちで撮影してたり。それ、実は三脚選びに失敗しているのかもしれません。

 普段静止画を撮影されている方が動画を撮影するにあたり一番困る機材は、もしかしたら三脚なのではないでしょうか。静止画と動画では、三脚に必要な能力がかなり違うからです。プロの現場では、三脚はドイツのSachtler(ザハトラー)とイギリスのVinten(ビンテン)のものがほとんどで、値段も60万から100万をゆうに超えるものもあります。撮影現場で機材の価格を聞かれることがよくありますが、みさなん一様に驚かれるのが、実は三脚の値段。三脚は動画撮影にはそれほど重要なアイテムなんです。そこで今回は、家庭用のハンディカムや一眼ムービーでの動画撮影に最適な小型の三脚を紹介します。

 

動画撮影とスチール(静止画撮影)の1番の違いは時間軸があることですが、このことが三脚選びに大きく影響します。静止画ではアングルを固定することが三脚の一番重要な役割ですが、動画ではアングルを縦横に滑らかに動かすことが要求されるからです。滑らかに動かすための三脚購入時の注意点は3つあります。

 

1.水平方向(パン)、縦方向(チルト)に動かした時に、適度な重み・粘りがあること

2.動きを止めた時に、三脚のねじれによる揺れ戻しがないこと

3.雲台のレベル(水平)を簡単に出せること

 

1はかなり重要で、細かいブツ撮りをすれば1発で雲台の性能が分かります。動画で三脚に乗せて大きな角度を素早く動かす機会って、実はそんなに多くありません。多くの場合、左右なら90度、上下なら45度程度の範囲をゆっくりと動かすことになると思います。その場合、雲台の動きそのものにある程度の抵抗や粘り(フリクション)がないと、均一のスピードで雲台を動かすことが難しくなってしまいます。また、アングルを動かす時に重要なのは動き始めと動き終わりをスムーズにすることですが、それにも雲台の抵抗や粘りがあることで、操作がやりやすくなります。

 

2は雲台よりも三脚部のたわみ、ねじれの問題です。三脚に強度がなく、かつ雲台の動きにある程度の重みがあると、雲台を特に斜めや水平方向に動かした時に三脚がねじれてしまいます。この状態で雲台の動きを止めた場合、三脚のねじれを元に戻そうとする力が働き、アングルが逆方向にブレてしまうのです。そのため、あまりにも細くて弱い三脚や、付け根がしっかりしていない三脚は、動画には不向きです。

 

3はビデオ雲台なら必須です。360度の水平をとらないと、アングルを水平方向に動かした時にどんどんレベルが狂っていってしまいます。カメラ三脚では三脚の長さを調節して水平を出しますが、ビデオ撮影の場合、その手間と時間がかけられないことも多いです。そこで必要なのが、ボールレベラーという仕組みです。三脚と雲台のつなぎ目がお椀型をしていて、水準器を見ながら簡単に雲台の360度水平を出すことができます。多くの小型三脚の場合、ボールレベラーが付いていませんが、こういった三脚はビデオ撮影には不向きと言わざるをえません。

ボールレベラーの仕組みです。

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左のボールレベラーの三脚側に右のボールレベラーの雲台側を載せて、水平が出たら裏側からノブで止めます

 

 以上の3点を全て満たす小型の三脚は、実はとても少ないです。私たちも小型のハンディカム用に散々探し回りました。そしてようやく見つけたのが、Slik の Daiwa VT-551 N という製品です。ボールレベラーを標準装備し、チルト方向には雲台の抵抗(フリクション)を調節する機構もあります。搭載重量は3kgまで大丈夫なので、ハンディカムはもちろん、一眼レフに2.8通しの大三元クラスのレンズをつけても大丈夫。しかも重量は1960g! ビデオ三脚としてはかなりの軽量を誇ります。

 

弊社では先代の VT-551 も使用していますが、VT-551 N との違いは運搬用のストラップがあるかないかくらいで、ほとんど変わっていません。それほど製品として完成しているといっていいでしょう。

 ところでこの Daiwa VT-551シリーズですが、先月、VT-551 II という新製品が登場しました。重量は変わらずに雲台の耐久性が向上しているということなので、こちらも期待しましょう!

 

これより大型の3~4kg以上の三脚となると、選択技は一気に増えます。三脚は重くてしっかりしたものの方が風に強かったり、ハイアングルが撮影できたりといったメリットがたくさんありますので、用途によって使い分けましょう。ただ、ハンディカムにはオーバースペックなものがほとんどです。

Manfrotto ビデオキット ツイン3段アルミ MSタイプ MVK500AM

Manfrotto ビデオキット ツイン3段アルミ MSタイプ MVK500AM

 

 
ボールレベラーのない三脚を使っていた方は、正直ビデオ用にボールレベラー付きの三脚を入手されることをオススメしますが、そうもいかない場合もありますね。その場合は、レベラーのみを単体で購入することもできます。これらの製品を三脚と雲台の間に挟んで使用するのですが、締め付けが甘くて水平がずれたり、締め付けそのものがやりにくかったり、あるいは搭載重量が減ってしまったりなど、最初からボールレベラーが付いている三脚に比べると使い勝手が良くない場合もあります。それでもいちいち三脚の長さを調節して水平出しをするよりははるかに便利なので、検討する余地はあるでしょう。

Manfrotto ボールカメラレベラー 438

Manfrotto ボールカメラレベラー 438

 

 

 以上、少しは三脚選びの参考になったでしょうか。三脚が変わると映像のクオリティも取り扱いやすさもかなり変わりますので、ぜひ一度ご検討してみてください。